次の選挙で問われる財政政策とは

2012年10月16日

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 10月25日の言論スタジオでは、土居丈朗氏(慶應義塾大学経済学部教授)、鈴木準氏(大和総研調査提言企画室長)、田中秀明氏(明治大学公共政策大学院教授)の3氏をゲストにお迎えし、「次の選挙で問われる財政政策とは」をテーマに議論を行いました。

次の選挙で問われる財政政策とは まず、代表の工藤は社会保障と税の一体改革における消費税の引き上げに触れ、「これによって財政再建の道筋が描かれたのか」と問題提起しました。これに対し3氏とも、超党派の合意による消費税の引き上げは評価できるが、財政再建の道筋は全くたっていないという見解を示しました。その中で土居氏は「社会保障の効率化・重点化が伴わなければ、財政再建の道筋は見えない」と述べ、また鈴木氏も10年後、20年後の「超高齢化社会でも社会保障制度と財政制度を維持出来るような改革が見えていない」と指摘しました。さらに、田中氏は増税の財源の一部を公共事業などに利用する議論について言及し、「増税に際して公共投資を増やすことになれば、増税の効果は数年で剥げ落ちる」と指摘しました。

 次に、財政再建の実現可能性について土居氏は、自身の試算に基づき「収支改善を全て消費税の引き上げで賄うとすれば25%前後の税率が必要だが、これは国際的にみても極端な高税率というわけではない」と指摘しました。一方で、田中氏は、「毎年首相が代わっているようでは、財政再建は数字の上では可能でも、政治的には極めて難しい」と述べ、痛みを伴う改革は国民のコンセンサスが得られないとの見解を示しました。なお、ここで視聴者から寄せられた「財政破綻したらどうなるのか」という質問に対して鈴木氏が回答し、「財政破綻懸念によって金利が上がれば、欧州のように金融システム危機と財政危機が複合的に起きかねない」と述べ、その結果、緊縮的な大増税や歳出削減が必要となり、「国民の生活水準を相当落とさないといけない」ことになると説明しました。

 続いて、財政破綻を回避するための施策について鈴木氏は、「日本が財政再建に取り組んでいるのだと把握できるように財政再建のルールを作る」などの信任を失わない知恵が必要であると述べました。また、土居氏は、「財政ルール以前に政党のガバナンスが機能していない」と述べ、首相・党首を頂点とした集権的な政治や政党のあり方を提案しました。

 今回の議論に先立ち言論NPOが実施したアンケート調査では、有識者87名から回答をいただき、「次の選挙で、財政再建のために政党や政治家が明らかにすべきこと」を訊きました。その結果、「財政再建を進める全体の道筋」という回答が最多の約8割を占め、それに続いて「歳出カットの具体的な方法(63.2%)」、「社会保障費増への対応(52.9%)」、「経済成長の進め方(52.9%)」となりました。

 このアンケート結果を受け、土居氏は「どの程度歳出削減をし、どの税収で賄うのか、いつまでに財政健全化を成し遂げるのか」を明示すべきと指摘しました。また、田中氏は、「少子高齢化を乗り切ることが本当のゴールだ。これをやれば高齢化社会を乗り切れるというメッセージを政治家が伝えてほしい。それが公正・公平なものであれば国民は納得する」と語りました。

議論の全容をテキストで読む    

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工藤泰志工藤:こんにちは。言論NPO代表の工藤泰志です。さて、言論NPOは9月に行った有識者アンケートで今度、選挙があったら、何を争点にすべきかをやってみました。その結果、社会保障と財政再建、エネルギー、民主主義、安全保障と外交問題、経済成長、この6つの問題を多くの人が今度の選挙の争点にすべきだ、ということになりました。私たちはこの6つを徹底的に議論して、今度の選挙前に政治や政党に質問を出そうという動きを始めようとしています。この前、社会保障をやりましたので2回目の今日は、財政問題について議論します。ゲストを紹介します。まず、言論NPOがやっているマニフェストの評価、特に財政問題の分野をやっていただいている慶應義塾大学経済学部教授の土居丈朗さん、同じく財政経済問題を手伝っていただいている大和総研調査提言企画室長の鈴木準さん、そして、最後に明治大学公共政策大学院教授の田中秀明さんです。昔、僕がお会いした時は財務省の方だったのですが、最近、財務省をお辞めになったばかりです。


第1部:【社会保障と税の一体改革】

増税はしたが、財政再建への道筋は?

工藤:早速、議論を始めていきたいのですが、私たちは有識者に今日のテーマをアンケートでやっていますので、その結果も交えながら議論をしていきたいと思います。この前、社会保障と税の一体改革ということで消費税を上げるということが決まりました。基本的には、社会保障の改革もやらなければいけないのですが、あまりよく見えないという話がこの前、ありました。さて、これによって財政再建の道筋が描かれたのかどうなのか、今回の社会保障と税の一体改革で消費税が上がったということを、どのように評価するのかから議論を始めましょう、土居先生からどうでしょうか。

土居丈朗氏土居:私は評価できると思っています。というのは、今までの戦後の税制改革、中曽根、竹下税制改革とか、橋本内閣にかけての税制改革とかありましたけど、今回はネットで増税する。つまり、これまで減税を伴った形の増税は行われましたけど、減税をしない形で増税をするという税制改革は今回が初めてです。もちろんこれは非常に国民に対してつらい選択を突きつけることになるのですが、正直に財政再建が必要であると、さらに、社会保障の税源が必要であると、そのためにはさすがに他の支出を削っただけでは賄えないということで、消費増税をお願いするということが貫徹出来た。

 それから、もう一つは超党派の合意が伴っていたということです。今の与党だけが賛成して、野党が反対するということだと、もし政権交代があるとこの政策が覆る恐れがあるのですが、それが一応は防げているのではないかと思います。勿論、まだ予断を許しませんが、その点では大きな成果だと思います。

工藤:鈴木さんどうですか? 評価していますか?

鈴木準氏鈴木:私も過去の消費税に対するアレルギーを考えますと、今回、衆参両院とも約8割の賛成票で成立した、この意味は非常に大きく、大きな一歩として高く評価できると思います。一方で、消費税をなぜ増税しなければいけないのかというと、やはり社会保障との関連ですが、一部の現役の人と企業の負担、これ保険料とか一部の人が負担する税、これだけでは社会保障は維持できない。そこで、オールジャパンで、消費税でやっていきましょうという考え方だと思うのですか、一方で、消費税は低所得者対策が必要だということで今回、年金生活者支援給付金制度を作ったり、これから簡素な給付措置だとか、給付付き税額控除とか、総合合算制度とか検討すると言っていて、三党合意では軽減税率の検討まで盛り込まれてしまったわけですね。従って、負担構造がいったいどのようになるのか、よく分からないという面があります。消費税を増税した事によって、今までと違う形で財政の維持可能性が確保出来たのかどうかは、もう少しよく見ていかないといけないでしょう。

工藤:田中さんどうですか?

田中秀明氏田中:同じ意見になってしまいます。消費税そのものの増税については、このねじれ国会の中で達成したことは間違いなく評価すべきだと思います。他方、社会保障の制度の問題は基本的には手をつけられなかった。増税するのに手一杯だったということではないでしょうか。

工藤:今の点も有識者の方に聞いてみました。そうしたら、皆さんと同じで「評価出来る」、「どちらかと言えば評価出来る」という項目が、合わせて7割になりました。今まで政府のやっていることは、ほとんど全部マイナス評価なのですが、ここだけは評価できている状況です。逆に言えば、今まで、どうしてこういう決断をしなかったかということですが、一方で「全く評価できない」、「どちらかといえば評価出来ない」という方も3割近くいるということです。

 その中で注目しなければいけないと思っているのですが、消費税の増税によって財政再建の道筋が描かれたと判断しているか、というのも聞いてみました。今度は逆の反応になりまして、「道筋が描かれた」というのはほとんど誰もいなくて、「半分くらい道筋が描かれた」、これはだいたい20.7%。「半分の道筋も描かれていない」は46%、「道筋が全く見えない」というのが33%ですから、8割がさっきの消費税の増税を決断したと、超党派でやったということに関しては評価したけれども、財政再建という課題から見ると、「全く評価できない」というのが8割いるというのが現実ですが、ここをどのように見るかということです。土居先生からお願いします。

土居:先ほど田中先生もお触れになりましたけど、基本的に増税はいいけれども、歳出削減、あるいは社会保障の効率化、重点化が伴ってなかったということが、今の結果に出ていると思います。そうすると、当然ながら、消費税増税だけだとまだ財政再建のためには不十分で、やはり社会保障給付も効率化、重点化しないと財政健全化の道筋が見えない。そうすると、ああいう結果になってくると思います。


辻褄合わせの増税で、行きつく先は・・・

工藤:ここは議論になってくるので土居先生にもう一つ聞きたいのですが、この消費税を織り込んだ形での内閣府の試算、つまり、政府が国民に約束しているのは、2015年にプライマリー赤字を半減にする。2020年にはその赤字をゼロにすると、これは昔のG20でも言ってましたし、かなり重い約束だと思いますが、2015年の赤字半減は、実は微妙なのですが、成長がそこにビルトインされていますし、そこはかろうじてどうにかするかという話ですが、その先の話、つまり2020年のプライマリー赤字のゼロは全く見えないわけですよ。財政再建がこの5%によって、消費税で見えないというのは当たり前のことのような気がしますけど、どうですか?

土居:その通りだと思います。私の印象で言うと、消費税を解決の一つの重要な切り札に使うとすれば、少なくても消費税率は15%ぐらいにまであげないと財政健全化の道筋はつけられない。ただ、問題は消費税5%だけでもいろいろと議論があった上に、これからさらにもう5%上乗せして増税するということについては、全然国民のコンセンサスが得られていないわけで、かつ消費税増税だけで全てを解決する必要もない。そうすると歳出削減、さらに新たな取組みをどうやって示すのかということをはっきり示されないと、財政再建の道はまだまだ見えてこない。やはり2020年までを目指すならば、極論を言えば消費税増税だけで何とかしようとすると、消費税率は15%ぐらいまでもっていかないと、と思いますし、歳出削減だけでやろうと思うと、社会保障給付とて例外、聖域でないという形でやらないといけないし、おそらく両方のミックスというところが落とし所になると思うのです。そこを見せないと2020年までにプライマリーバランスを黒字化するということは中々、難しい。経済成長だけ促したところで、日本の税制の構造はそんなにどしどし自然増収が入るような構造になっていませんから、経済成長だけでも難しい、こういうあたりだと思います。

工藤:鈴木さん、今の話に続けるのですが、僕はさっきのアンケートで「半分くらいの道筋は描かれたと思うか」という質問は、実をいうとプライマリーバランスの半分を意識していました。ただそれですら、20%しかなくて、それ以上つまり8割が「道筋が不透明」、この有識者はどういう判断なのでしょうか?

鈴木:おっしゃったように2015年頃に税率10%で、その先が全然、見えていないという気持ち悪さが残ってしまっている。加えて申し上げると、2020年度までに遅くとも、プライマリーバランスを黒字化させるという目標ですけど、2020年度にピンポイントで黒字化させればいいということではなくて、その先も高齢化は進むわけですから、システム自体をプライマリーバランスの黒字を維持できるようなシステムにしていかないといけない。つまり、辻褄合わせでどれだけ足りないので何%増税という話ではなくて、社会保障制度、財政制度全体を超高齢化の中でも2020年代、30年代に維持出来るような改革の中身が今回、見えていない。例えば後期高齢者医療制度を廃止してどうするのかについて、結論が得られなかったわけです。それが典型ですけど、そういうことがこのアンケートの結果に出ているのではないでしょうか。

工藤:財政が深刻なのは、高齢化社会に伴って社会保障費が急増している構造があると。それについては社会保障のシステムに関して今回、何か変わったわけではない。逆に、ばらまいたりする状況になっている。とにかく5%上げるということはこれほど大変なのかということだけれども、結果として上がっても、財政再建という別の目標設定のメガネから見ると、全然、その目標にもなっていないということですよね。構造と数値的にもという理解で......

鈴木:ただ、ひょっとすると、消費税は非常に国民的関心が強い点が重要かもしれません。社会保険料があがるのは、皆なんとなく受け入れますが、消費税には非常に厳しい。今回、社会保障と消費税とをひもつけましたので、両者を比較考量して、社会保障を減らすのか、消費税を上げるのかという国民的議論が出来るプラットフォームができたということが、今回の成果と言えるかもしれない。

工藤:田中さんどうですか?


増税5%はとりあえずの止血剤

田中:このアンケートの回答者は冷静に今回の消費税の増税を見ていると思います。病人に例えて申し上げまると、日本の財政は今はまさに血が出ていて、赤字と言う意味での血がどんどん出ている状況です。それを少し一時的に止めて、針で縫って血が出ないのを少し止めている。しかし、血は出ています。ただ、一時的に止まっても病気そのものが直っていないので、数年で消費税5%の増税の効果ははげ落ちてしまい、さらに血がどんどん出ていくと予想される。それは鈴木さんもおっしゃったような高齢化の問題であり、さらに消費税の増税に際して、自民党あるいは公明党も公共事業をもっと増やそうとしたように他の歳出も増えます。今度、財源が出来たので、整備新幹線をつくろうと、こういう別の声も聞こえているわけです。いずれにせよ、病気そのものは直っていません。一時的に出血が少なくなっているだけです。この止めた所がいずれほころびてしまって、また血がどんどん出てくる。仮に5%増税しても2020年代のプライマリーバランスの達成という意味では、まだ努力が足りないのが現実です。

工藤:今の話は重要な論点があって、消費税の5%の増税は何のためにやるのかと、つまり上げることが大変だから、上げたということでよくやったという話だけれども、しかし、上げても財源が何に使われるかと、例えば基礎年金の2分の1とかいろいろあったから、いろんなことになってしまったら、財政再建にあまり寄与しないこともあり得るわけですよね。

土居:特に民主党政権になって消費税増税の議論をしているプロセスの中でときおり聞こえてきたことは、財政再建のために消費税を増税すると言えば、多くの国民は反発するだろうから、社会保障給付のために消費税増税をお願いすると。そっちの方に軸足をもっと移していくべきである、ないしはそうすれば国民も少しは理解してくれるという立論が、かなり顕著にあったと思います。そうすると端から財政再建のために増税するわけではない、と言っているのも同然のような状態。つまり社会保障と税の一体改革の取り組みに対して、別の角度から批判する人は、結局は社会保障のために消費税があたっているのではなくて、財政再建のためにあたっているのだという見方をする方もいるかもしれませんが、私の目から見るとかなり社会保障給付にひきずられた形で消費税増税の財源が充てられている。そこにはもちろん拡充部分も入っている。そうすると、やっぱり消費税増税が純粋に財政赤字削減に結びついている部分は、相当限定的になっている。

工藤:だからと言って高齢化の社会保障の持続性が、これによって何かが変わったわけでも全然ないですよね......この前、震災の復興財源を流用しているという話があったじゃないですか。同じようにせっかく税金を上げてもちゃんとした目標がなく、そもそもなんの目標かもあいまいになっていますけど、ちょっと一言ずつ。

鈴木:これで財政再建になるのかという意味では、我々もっと一体改革を数字で評価しなければいけないと思っています。例えば機能強化といった時に、税をいれて保険料を低所得者で軽減するということを機能強化と呼んでいたり、それから効率化といった時に公費を減らすこと、つまり給付を減らすのではなく、公費を減らすことを効率化と呼んでいたりします。ですから、本当にこの一体改革と消費税増税で財政がどれくらい改善するかということは、一方で保険料を減らして、税を取っているだけかもしれませんし、効率化といってもそれは公費を減らしているだけで、給付は全然減っていないかもしれない。中身を本当によく見ないと、どれほど効果があるのかは、実はよく分からない。

工藤:田中さんも一言。

田中:消費税増税は確かに評価出来るけれども、冷静に考えると、今回の一体改革は社会保障関係費が増えているので何とか少しでも財政赤字を食い止めたいと、そのための財源調達であって、社会保障と税、例えば保険料と税はどう分担するとか、そういう意味での一体改革ではありません。足らない所を埋め合わせる。それも一つの進歩ではありますが、結局、歳出削減より増税の方がやさしいのです。厳しい改革は民主党政権では難しかったということだと思います。

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第2部:【どうなっている日本の財政状況】

財政健全化の鍵は?

工藤:次の議論に進みましょう。財政再建の状況はどのようになっているか、をここで話さなければいけないと思います。アンケートでは、「日本の財政再建は可能だと思いますか」と聞いてみました。私は、財政再建はかなり厳しいと思っているのですが、有識者の方は、「現状の取り組みでは難しいが、まだ間に合うと思う」というのが74.7%、「財政再建は厳しい」というのが18.4%、「現状の取り組みで可能である」というのが、0%でした。これはなぜなのかと言う理由をみると、「まだ間に合うと思わなければやってられない」という意見もあったのですが......日本の財政、今はどんな状況で、どういうことを考えなければいけないのでしょうか。

土居:私は現状の取り組みでは難しいけれども、まだ間に合うという考え方に立っています。共同論文を最近、書きまして、そこで分析した結果、100年という長きにわたる財政状況を見渡した時に、ということなので、5年後、10年後に突然今のスペインやイタリアのような状況に追い込まれてしまったら、身も蓋もないのですが、少なくてもそこまで異常な金利上昇がないとしたならば、対GDP比で10%ぐらいの収支改善を行わないといけない。10%というのは、いろいろな計算方法が出来ますけど、例えばそれを全て消費税で賄うという極端な場合、だいたい消費税1%の税率で0.5%のGDPの税収が入ってくると考えると、今から20%ポイント税率を上げればその収支の穴は埋まる。その代わり、ただちに上げて100年間取り続けなければいけないというかなり厳しいものですが、そうすると税率に直すと25%前後ということですから、前人未到の高税率ではない。つまり、スウェーデンや北欧諸国では25%の税率で消費税を取っているわけですし、もちろんこれすべて消費税取る必要は全然ありませんし、自然増収に若干委ねることもあるし、歳出をもっと削るということによってこの増税幅をもっと少なく出来る。何が言いたいかというと、とても想像できないほどの財政負担を国民に課さなければ、政府債務は発散して、財政は破綻してしまうのかというと、そこまでひどくはなっていない。ただし、今は非常に低い税率だから、何とか収まっているのであって、これがまかり間違って何らかのきっかけで国債金利が3%、4%、それ以上になるということが起これば、たちまち今の話は破綻してしまう。ですから、そうならないように短期的には財政健全化の姿勢を示しつつも、手堅くきちんと消費税や歳出削減をすることで、収支改善を対GDP比で10%というのは結構大きいですけど、頑張ってやれば財政再建はまだ間に合うと。

工藤:つまり今の形は25%ですよね。今、10%になってこれから15%消費税を上げなければいけないというのが、日本の今の政治で5%上げるだけでもこんな大変な状況の中で本当に可能なのか。確かに数字上は辻褄が合うような気がしますが。それと、今のお話で気になったのが、現在日本の財政は債務が累増する破産状態になってますよね。

土居:もちろん。今のスピードで政府債務が累増し、これが食い止められないということになれば、早晩対GDP比で300%という前人未到の政府債務残高になるということも考えられるので、そんな状況でも1%を割るような金利で投資家が買ってくれるのかというと、さすがにそれはあり得ないと。

工藤:そうすると今の状況ではかなり厳しい雰囲気である。

土居:かなり厳しいです。これは物理的に可能だということで、政治的に可能かどうかは全然、別問題。

工藤:鈴木さんどうでしょう、今の話を聞いて。

鈴木:土居先生から、何とかなるけれども財政が非常に厳しいというご説明があったわけですが、今の財政状況の中身を見てみますと、じゃあ、歳出のどこを減らすかと。もちろん公務員人件費を減らさなければいけないとか、行革をもっとやらないといけないとかたくさんあります。公共投資はかなり減らしてきたけれども、まだムダがあるのではないかと。しかし、やっぱり一番大きいのが社会保障です。どうしても社会保障の話になってしまいますけど、超高齢社会での社会保障費が一番大きい。これをどうコントロールするかが、財政健全化の一番の鍵です。また、日本の国民負担率は国際的にみて非常にまだ低い、増税余地があるということで日本の国債はまだ信頼を失ってないと思いますが、やはりどうやってうまく負担増していくかというのがもう1つ。社会保障についてはどういうふうに、実質で減らしていくか。実質というのは現役の賃金に対してです。賦課方式でやっていますから、経済成長すれば負担をしていけるのですが、成長しないのに所得代替率を上げてってしまうと、これはもう破綻するということになります。賃金で測った実質で見た給付を、どう下げていくかが一番問題で、今回も年金の特例水準2.5%払い過ぎているのを減らすと言う法律はまだ通ってないんですね。物価対比の実質水準の適正化すら3年もかけてやるという政府案ですが、私はすぐにでもやった方がいいと思う。こういうところを見ても、やはり社会保障をどういうふうにやっていくかという難しさ、ここをどう克服できるかという問題が財政再建に一番重要なポイントです。

工藤:実際問題ですと、社会保障費がどんどん増えて、他のところがどんどん減ってきているわけですよね。逆を言えば、他のところをゼロにしても、いずれ社会保障だけが、毎年1兆円ずつ増えているわけですよね。だから、そこにメスを入れないと駄目になると言う話ですよね。

鈴木:一兆円というのは公費負担部分の話で、社会保障全体はもっと大きいわけです。


日本は沈むタイタニック号でパーティー中

工藤:田中さんはどうですか?

田中:可能かどうかと聞かれれば、将来の話は一般論でいえば可能だと思いますが、政治的な情勢を考えれば極めて難しい。財政、予算は政治そのものなので、毎年総理大臣が変わっているような状況では、財政再建は難しいでしょう。小泉さんといえども財政再建を達成できなかった。今の日本の政治状況を考えると極めて難しい。諸外国で財政再建を成功した例をみると、国民にせよ、政治家にせよ、官僚にせよ、危機感が共有されています。自分の尻に火がついて、改革せざるをえなくなるのですが、残念ながら日本はそのような状況ではない。これも例えて言えば、タイタニック号は沈んでいるけれども、日本国民の多くはまだ宴会をして楽しんでいます。海水が自分の口のレベルまで来て、呼吸が出来なくなるということにならないと。現状の政治状況をでは、タイタニック号が沈んで海水が自分の口のところまで来ない限り、改革は難しいと思います。

工藤:今、見ている人から質問が来ているのですが、財政破綻したらどうなるのかということです。日本が昔、戦争で負けた時に、この時はもう国家は破綻しているのですが、その後財政調整というか、市場にすごい調整があって、すごいインフレになって、すごい厳しい状況っていうのは本では見ているのですが、皆さん専門なので財政破綻したらどうなるのですか?

土居:いきなり日本政府がデフォルト宣言することは起こらないでしょう。明らかにそれ以前に、いろいろな事実上、財政破綻と言えるような現象とか、そういうようなこととして観察されることになる。欧州の財政危機、これが1つの教訓だと思いますが、まず金利が上がってくると、政府が支出を決済できるキャッシュを必ずしも十分に持ち合わせてないのではないかと。そうすると高い金利をつけないと貸せないと言うことになります。一番、最悪のケースはギリシャということになりますけど、仮にギリシャのようにならないとしても高い金利を払う。高い金利を払いたくないということで、政治家がもし間違った選択をすれば何をするかというと、事実上、国債を日銀に引受させるかのような行為で高い金利負担を回避するでしょう。欧州諸国は欧州中央銀行がそれをさせないようにしてますから、今のところ起きませんけど、日本の場合は政治家が選択を誤ればそうなる。そうなればまさに戦前の軍部の軍事費の賄い方と同様に、工藤さんがおっしゃったようなインフレという話になる。

工藤:84倍ぐらいで、100倍近い数字ですよね。

土居:もちろん戦時中は、空襲による生産設備の打撃が追い打ちをかけたので余計そうなっているのですが、少なくともまかり間違うとそういうことになると。例えそれまでデフレだったとしても、人々の期待が変わって非常に高い、10%前後の高いインフレが突然起こるということはあり得ないと思うかもしれませんが、場合によっては起こるかもしれない。

工藤:さっき鈴木さんがおっしゃったように、日本の財政債務は対GDP比で200%を超えているわけですよね。これは世界で最高のレベルの負債比率です。それが何で持つのかというのは、消費税がまだ低いからそれが上がるという余力があるからだと言っていましたよね。ただ、消費税そのものが20%から30%まで余力があるといっても、日本の国民はまだ本当に30%になるとは感じてないと思います。そうなった時に、もしくは何かがあった場合に、この前IMF(国際通貨基金)と世銀総会が東京であった時に、日本の金融機関が日本の国債をほとんど持っているから国内でほとんどファンディングができるけれども、土居先生のおっしゃった金利が上がるということは、国債が暴落するということだから、持っていた国債がみんな下がってしまうと金融機関が自分たちの資産がどんどん減ってしまうので、貸出が出来ない状況になってきますよね。ひょっとしたら、金融機関が倒産する。そういう可能性があるから、この前IMFの世銀総会でそういうことは危険だと、鈴木さんはどういうふうに見ていますか?

鈴木:まさに今、工藤さんのおっしゃったことは欧州で起きていることですね。金利が財政破綻懸念で上がれば、金融システムがおかしくなって、そこに公的資金を入れようとすると、もともと財政危機が原因ですから、国債の格下げが起きて、金利が益々あがるというこの悪循環。金融システム危機と財政危機が複合的に起きているのが欧州の現状で、そういうことが日本でもいずれ起きかねない。そうすると大増税とか、ものすごい歳出削減をやっていかないといけない、国民の生活水準を相当落とさないといけない、という可能性が出てくるというのが財政破綻の帰結だと思います。本当に破滅的な状況になれば、病院にかかっても財源がないので保険給付を受けられず、いま3割自己負担ですけど、3割自己負担では病院にかかれない。イメージとしては、必要なサービスが受けられなくなる。これが財政破綻です。


自分の尻に火がつくまで動かない?! 危機感の共有を

工藤:田中さんにも聞きたいのですが、そういう状況を回避するということはどういうことですか?どうしたら回避できるのですか? 今、日本の債務はどんどん膨らんでいます。毎年毎年、税収よりも借金の方が大きいわけですよね。だから、借金がどんどん膨らんでいく。その中で最終的な危機を回避しながら財政再建をするためには、どうしていったらそういうことが可能になるでしょう。

田中:確かにGDP比の債務残高は高いのですが、数字だけではなくて、経済全体の規模であるとか貯蓄との関係で考えるべきであり、一概にその数字の大きさに驚く必要はありません。しかし、確実に、まさに皆さんが議論されているようにリスクは高くなっているわけです。いろんな推計でも2,3年はまだ日本に体力があります。しかし、5年から10年のスパンで見ると、貯蓄はどんどん減って、諸外国から借りざるをえなくなると考えられます。ただちに経常収支が赤字になったからといって、経常収支の赤字=破綻というわけではなくて、諸外国に頼ってもいいのですけど、諸外国が日本は大丈夫ですよと信用して金を貸してくれない限りは続けられなくなるわけです。そういうクレディビリティが本当に日本にあるでしょうか。信用がなくなると、今まさにギリシャやイタリアとか、スペインのようになる可能性があります。我々は、リスクが高くなっていることを認識する必要があります。但し、それを回避できるのかというと私は非常に懐疑的です。自分の尻に火がつかない限りは本当の意味での改革は出来ないからです。小泉元首相は改革の旗を振っていたときでも、国民的なコンセンサスは十分ではありませんでした。行きつくところまではいかないので、改革は基本的には難しい。

工藤:危機がなければ、改革は進まないと思っている。

田中:そうです。こう言っては実も蓋もないのですが、諸外国の例を見ても危機が改革を促す最大の要因です。ギリシャになるまでに手を打つことは出来るかもしれませんが、危機感の共有が出来ない限りは、本当の意味での改革は難しいと思います。

工藤:土居さん時間の関係で、一言でいいのですが、土居さんはさっきまだ間に合うとおっしゃって、大きな経済学的なアプローチの中ではある程度のことをやれば辻褄が合うと言ったのですが、どうしたらこの状況を回避して、財政再建というイメージが出来るのか、それを一言お願いします。

土居:今の状況は政治家、官僚もそうかもしれないけれども、低金利の状況にあぐらをかいているということだと思います。日本国債が1%を割るような金利がついているということにあぐらをかいて、どうせ低い金利で借りられるのだから、無駄なことをしても支障はないと勘違いしている。そこには世代間格差を助長しているとか、いろいろな問題も付随しているのですが、少なくとも言えることは、後々、問題が多いと気がついた政治家が現れてほしいということなんです。ないしはそういうことを国民がつきつけて、別に今直ちに増税しろとか、財政再建やらない政治家は駄目だということではないにしても、その金利上昇に伴う国民生活や企業行動に対する悪影響をどうやって回避するか、きちんと政治家が語れないようでは、そんな政治家に財政運営を委ねてはいけないと。金利は上がってほしくはないけれども、少なくともそのリスクをきちんと認識し、それを回避することを出来るだけ心がけようとする姿勢をもっているかどうか、これがまず最初の第一歩になると思います。

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第3部:【問われる民主主義】

政党のガバナンスは機能しているのか?

工藤:最後の議論を始めます。これから選挙があった場合、財政再建問題について政治家に、何をきちんと国民に説明してほしいのかということ。逆に言えば、そういうことを説明しない政治家には、票を入れないということを考えないといけないと思います。ただその前に疑問に思っていることがあって、ギリシャもそうだったのですが、民主主義の問題が問われました。いろんな政治家がここまで多くの国民を切り詰めさせなければなりませんでした。サービスにしても、そうしていかないと中々、財政再建が出来ないという状況の時に、政治家よりも実務家で組閣した時もありましたよね。実際に、政治家が国民に本当のことを語っていない。借金がここまでなっていても、まだそれをきちんと大変だよ、とこうしなきゃいけない、という人が現れない政治の構造そのものを、どう考えるのか、お聞きしたいのですが、鈴木さんからお願いします。

鈴木:さきほど増税の余地があると言いましたけど、田中先生のおっしゃるように、もし政治的に出来ないと判断されれば、これは財政破綻するということだと思うんですね。そこで一つの知恵は、日本が財政再建に取り組んでいるのだと内外の人々が理解し把握するために、きちんとしたルールを作る、財政再建のルールを作る。今であれば2010年代後半どうすればいいのかを正面から議論すべきだと思います。足元では特例公債法案が通らないことが問題になっていますが、一方で予算をとおして、歳出していいと言っておきながら、歳入の法案を通さないのはある種の自己矛盾を政治が起こしているわけで、そこにはルールがありません。もちろん今の憲法や財政法が、特例公債をこんなにたくさん出すことを常態化させるということを想定していないということがあるかもしれませんが、財政再建ルールがきちんとあってそれを決断してやるということが信認を失わないための一番のポイントだと思います。財政再建のルールに関しては田中先生がご専門ですけど、そういう意味では次に何を求めたいか考えた場合、2010年代後半以降何をやるのか、3党合意で社会保障制度改革国民会議を作って、1年以内に、先送りされたことについて何かしらの結論を出すと法律に書いたわけです。これが本当に守られるのかどうか、守られないとしたら、一体何を信じたらいいのか分からない状況に陥ることになりますので、3党合意で決まった社会保障制度改革推進法で書かれている理念と考え方で進む意欲と方策がどれくらいあるのか、ということを次の選挙で示していただく必要があると思います。

工藤:言葉だけでは駄目ですけど、どうでしょうか、政治家の話ですよ。

田中:よく言われるように選挙になると、政治家は歳出増、減税に走りやすい。これはある意味で政治家を批判してもしょうがなくて、合理的な行動なのです。次の選挙で当選することが政治家にとって最大の目的であって、そういう行動を取りやすい。財政について言えば、政府部門の予算は他人のお金を使う仕組みです。自分のお金だったら大事に使いますが、他人のお金であればどんどん使うというインセンティブ、メカニズムが働きます。予算というのは人のお金を使うという根本的な問題があるわけです。人のお金だけれど、自分のお金のように大事に使う、そういうようなメカニズムが必要です。例えば財政ルールであり、透明性な予算制度なのですが、それがないと、政治家や官僚が自己の利益を追求するように合理的に行動し、赤字は限りなく膨れてしまいます。この根本的な問題が、民主主義に内在しており、これにメスを入れない限り問題は解決しません。

工藤:土居さん一言、本論に入りますので。

土居:この10年くらいの日本の政治を見て、確かに小泉政権の時は骨太方針2006、これでプライマリーバランスを2011年までに黒字化しようと言っていたのに、リーマンショックとかいろいろあって、とん挫した。それで民主党政権も財政運営戦略で財政ルールを作って、2020年までに黒字化と言っているけれども、ご承知のようになかなか進まない。確かにこういうのを見ていると、田中先生ご専門ですけど財政運営ルールが非常に重要で、これにコミットできないと財政健全化出来ないけれども、さらに日本の場合はそれ以前の問題があるのではないかと。それは政党の中のガバナンスが全然うまく機能していない。極端なことを言えば党総裁・党代表が党の全体を掌握出来ない状態で、果たして本当に与党となって内閣を形成して、本当に財政健全化にコミット出来るのかということから、確かに危うい状況になっていると思います。国民はそれぞれの政党の状況を見ながら、党代表は党の顔としてきちんとその政党内でガバナンスを効かせられているのか、というところは、もっともっと積極的に問うべきだと思います。もっと別の言い方をしますと、党内の集権化をきちんとやっていただかないと、各党、やっぱり与党になってもだらしない。与党になったら、たちまち意見が分かれて造反が起きたり、党内分裂してとなっては、何のために政党に票を入れたのかさっぱり分からない。こういうことになるのでは、だからこそ、そこはきちんと襟を正して頂きたいと思います。


最大の目標は財政再建ではなく、少子高齢化の壁をいかに乗り越えるか

工藤:今の話は全ての政策に言えるのですが、政策の立案実行のガバナンスがここまで機能していないと、選挙の持つ意味に懐疑的にならざるをえないわけです。だから、有権者側がこの状況に対してかなりプレッシャーをかけないと、何かの仕組みが変わるインセンティブが出てこないと感じています。財政再建の問題に限っての有識者アンケートで、「次の選挙で政治家や政党は財政再建のために、何を明らかにしなければいけませんか」と聞きました。これはいくつ選んでもいいのですが、一番多くて、8割を超える人が選んだのが「財政再建をどのように進めるのかの全体の道筋を示してほしい」と。その後、「歳出カット」で、これが6割、「少子高齢化による社会保障費増への対応」が52%、そして「経済成長の進め方」も52%。それから「財政の現状についてちゃんと説明しろ」というのが50%と半数くらい。その下に39.1%で続いているのが「政治家の定数を削減しろ」、これは、政治家は話にならないぞという怒りが出てきているのだと思います。これとご自身の考えを踏まえて、今度の選挙で政治家に、この一つでいいから説明しろと求めるとしたら、みなさん何を求めますか。どうですか?

土居:まず今回のアンケートでも一番多くの人が入れた全体の道筋です。これがはっきり言って、抽象的なもので終わってしまうようでは駄目だと。極端に言えば、どの程度歳出削減をするのか、どの程度税収改善によって賄うのかというところの、おおまかであっていいので、少なくとも決意のほどをきちんと示すということと、いつまでに財政健全化を成し遂げるのかということです。願わくば、そういう案を各党が出して、今の日本の内閣府がそういうことをやってくれるか分かりませんが、少なくとも各党が出した案に対して、こういう形ならばそれが実現するとか、辻褄が合っていないとか、というような試算を、もし駄目なら鈴木さんのシンクタンクで出していただければいいかもしれませんけれども、やはりそこは数字、2009年の衆議院選挙の民主党のマニフェストは、絵に描いた餅に終わってしまったということからしても、数字を示すということがあったとしても裏付けがなかったということになってもいけませんから、そこは客観的な数字を伴ないながら、実行可能性を意識して、どこまで本気でそれをやるのかを示すと。当然ながら、2番目に多かった歳出カットの具体策という話も自動的についてくると思います。歳出削減を収支改善全体の7割ぐらいを歳出カットでまかなうのだと高々に言っても、具体策が伴なっていないのでは、単にそれは増税をしたくないと言っているだけに過ぎないと批判されますから、これはきちんとこういう形で削減するのだということを具体的に言っていただくこととなる。

工藤:鈴木さんどうですか?

鈴木:全体の道筋という意味では、土居先生が仰ったように、どういう負担増とどういう歳出削減をするか、この2つが絶対必要なのは間違いないのですが、一つ今日出ていないお話としては、私は経済の成長も合わせて考える必要があると思います。経済の成長によって財政再建が出来るという意味ではなく、部門別のマクロバランス、ISバランスといいますけど、それを見ると、今、政府が赤字であるのに対して、家計はあまり消費をしていない、お金を余らせているわけです。企業も投資をしておらず、お金を余らせている。その鏡として政府が赤字となっている。これはどちらかが原因、どちらかが結果ということではなくて、そういう構図があるわけです。従って、現状から政府の財政赤字が縮小する状況というのは、同時に民間部門の支出が増えている状況を作らないといけない。消費なり投資なりが活性化して、もう少しまともな経済になっている状況が、同時に生じていないと、単純に政府が増税と歳出削減だけをやっても結果的に財政再建は出来ない。もちろん財政再建は国民の経済がより豊かになるために必要ということでやっているわけですから、歳出削減と増税を行う中で成長志向の税制を作っていくとか、歳出構造もより成長志向の歳出に変えていくということをやっていかないと、全体として財政再建自体もできなくなってしまう。最近の政策はどちらかというと成長志向が希薄になってきた面が私はあると思います。もちろん国民負担増と歳出削減が必要ですが、それと一緒に経済をどうするのか、これらを一緒に組み合わせて考えないと、うまくいかないと思います。

工藤:田中さんお願いします。

田中:私もこの回答についてはほぼ同じような意見です。若干補足させてもらえば、そもそも論を言って申し訳ないのですが、財政再建が究極的な目的ではないと思います。最大の課題は世界に例を見ない少子高齢化をどうやって乗り切るかです。もちろんそれに当たって財政再建は重要な要素であることは間違いないのですが、本当のゴールは財政自身の再建ではなくて、いかに少子高齢化を乗り切るかということだと思います。少子高齢化を乗り切るためいは改革は待ったなしです。それは、増税でも歳出削減でも痛みは伴うわけです。こういう痛みはあるが、我慢して欲しいと。でもこれを乗り切れば少子高齢化を乗り切れるのだと。そういうメッセージを政治家が国民に伝えられるかということだと思います。政治家が自分のことばでていねいに説明すれば、痛みがあっても、それが公正なものであれば国民は納得するだろうと思います。本来の社会保障税一体改革とは、より恵まれた人には我慢してもらうという改革です。これをやれば乗り切れるというメッセージを政治家は出すべきだと思います。

工藤:この財政再建だけで聞くと、今あるプライマリーバランスの目標設計は自民党政権でもあったわけです、民主党もあったと。であれば、これは目標としてコンセンサスある目標だと認定してよろしいのですか。

土居:プライマリーバランスは学術的にもきちんとした裏付けを持った指標です。もちろんプライマリーバランスがゼロになったからと言って、財政健全化が終わったわけではないですけど、少なくともまずは赤字をなくすということから始めないことには何も始まらないので、一つ重要な指標だと。


良い商品(社会保障)作りには、仕組み(予算編成)の改革を

工藤:この目標はある程度意味があるとしたら、それを本当にどのように実現するのかと、やはり責任を持つ言動が選挙で必要だということはよろしいのですか。もう一つ聞きたいのが、僕が入れた質問の中で10%台になったのですか、予算編成の縛りが非常に気になっています。例えば国債の発行とか、歳出の規模とか、全体的に昔のリーマンショックの水準があって、本当に財政再建に、この政権とか政治とかが取り組んでいるのかよくわからないのです。なので、私は全体の道筋プラス予算編成の仕組みを選挙ではっきりしてもらうと入れたんだけどあんまり人気がありませんでした。専門家の皆さんはこれについてどう思いますか?

田中:社会保障制度の改革は必要だというのは皆さんの共通認識だと思いますが、私はその改革をやるためにはまさに工藤さんのおっしゃられたように予算編成の仕組みを変えなければなりません。つまり良い商品を作るためには、それを作る仕組みが重要なのですが、そこの改革が日本は非常に遅れているわけです。従って、良い政策を作りたいと思っても、それをつくる良い仕組みがない限り、真の改革難しいでしょう。政策をつくる仕組みを改革しないといけない。これについては社会保障制度の改革以上にコンセンサスが乏しいと思います。

工藤:鈴木さんどう思いますか、今の話は。

鈴木:財政運営戦略に基づく中期財政フレームですよね。3年先までについて1年ごとにロールオーバーしてやるというやり方でやっていますが、あれは国の一般会計だけを対象としていますし、毎年注意書きの量が増えて、注書きそれぞれに政治的に非常に重い意味があって、普通の人が読んでも一体何を言っているのかわからない。注書き付きの中期財政フレームもルールといえばルールですが、民間の立場から申し上げれば、社会保障の特別会計も考えていかなければなりませんし、地方財政をどうするのかという問題もあるわけです。プライマリーバランスは国、地方合わせて、黒字化させていかないといけないという話ですから、今の財政運営戦略と中期財政フレーム、一般会計の歳出で71兆円という枠をはめるだけのやり方は、今限界に来ていると私は思います。

工藤:土居さん、どうぞ。

土居:今のお二人の話はその通りだと思います。そういう意味では、一つのキーワードは永田町、霞が関の集権化ということです。つまり、総理大臣がきちんとグリップを握って切るところは切る、メリハリをつけるところはメリハリをつけるということが出来るということが成し遂げられなければ、各政党の総裁・代表として選挙に臨んだ時もその朝令暮改になってしまうかもしれないし、いざ与党になって総理大臣になったからといって、各省の予算要求を押されられないということになるかもしれない。もちろんこれは長年にわたり学者が霞が関、永田町の断片化と縦割り行政ということで指摘してきた大問題で、これを克服するのはそう一朝一夕ではできないかもしれないけれども、そこに果敢に挑むことで、財政再建も経済成長もいろんな面でメリハリのついた政策が講じられるというところにつながってくるのではないかと思います。

工藤:私たちはこういう議論を通じて今度の選挙できちんと政治家に語ってもらおうという動きをしていきたいと思っています。この議論と並行して、私たちは政治家に白紙委任はしない、という賛同を呼び掛けています。今日現在900人になっていますが、どうしても百万人集めたいと思っていますので、ご協力していただければと思います。ということで、土居先生、鈴木さん、田中先生、どうもありがとうございました。

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放送に先立ち緊急に行ったアンケート結果を公表します。ご協力ありがとうございました。

2012年10月25日(木)収録
出演者:
土居丈朗氏(慶應義塾大学経済学部教授)
鈴木準氏(大和総研調査提言企画室長)
田中秀明氏(明治大学公共政策大学院教授)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)
※この議論は2012年10月25日(衆議院解散前)に行われました。

工藤泰志工藤:こんにちは。言論NPO代表の工藤泰志です。さて、言論NPOは9月に行った有識者アンケートで今度、選挙があったら、何を争点にすべきかをやってみました。その結果、社会保障と財政再建、エネルギー、民主主義、安全保障と外交問題、経済成長、この6つの問題を多くの人が今度の選挙の争点にすべきだ、ということになりました。私たちはこの6つを徹底的に議論して、今度の選挙前に政治や政党に質問を出そうという動きを始めようとしています。この前、社会保障をやりましたので2回目の今日は、財政問題について議論します。ゲストを紹介します。まず、言論NPOがやっているマニフェストの評価、特に財政問題の分野をやっていただいている慶應義塾大学経済学部教授の土居丈朗さん、同じく財政経済問題を手伝っていただいている大和総研調査提言企画室長の鈴木準さん、そして、最後に明治大学公共政策大学院教授の田中秀明さんです。昔、僕がお会いした時は財務省の方だったのですが、最近、財務省をお辞めになったばかりです。


第1部:【社会保障と税の一体改革】

増税はしたが、財政再建への道筋は?

工藤:早速、議論を始めていきたいのですが、私たちは有識者に今日のテーマをアンケートでやっていますので、その結果も交えながら議論をしていきたいと思います。この前、社会保障と税の一体改革ということで消費税を上げるということが決まりました。基本的には、社会保障の改革もやらなければいけないのですが、あまりよく見えないという話がこの前、ありました。さて、これによって財政再建の道筋が描かれたのかどうなのか、今回の社会保障と税の一体改革で消費税が上がったということを、どのように評価するのかから議論を始めましょう、土居先生からどうでしょうか。

土居丈朗氏土居:私は評価できると思っています。というのは、今までの戦後の税制改革、中曽根、竹下税制改革とか、橋本内閣にかけての税制改革とかありましたけど、今回はネットで増税する。つまり、これまで減税を伴った形の増税は行われましたけど、減税をしない形で増税をするという税制改革は今回が初めてです。もちろんこれは非常に国民に対してつらい選択を突きつけることになるのですが、正直に財政再建が必要であると、さらに、社会保障の税源が必要であると、そのためにはさすがに他の支出を削っただけでは賄えないということで、消費増税をお願いするということが貫徹出来た。

 それから、もう一つは超党派の合意が伴っていたということです。今の与党だけが賛成して、野党が反対するということだと、もし政権交代があるとこの政策が覆る恐れがあるのですが、それが一応は防げているのではないかと思います。勿論、まだ予断を許しませんが、その点では大きな成果だと思います。

工藤:鈴木さんどうですか? 評価していますか?

鈴木準氏鈴木:私も過去の消費税に対するアレルギーを考えますと、今回、衆参両院とも約8割の賛成票で成立した、この意味は非常に大きく、大きな一歩として高く評価できると思います。一方で、消費税をなぜ増税しなければいけないのかというと、やはり社会保障との関連ですが、一部の現役の人と企業の負担、これ保険料とか一部の人が負担する税、これだけでは社会保障は維持できない。そこで、オールジャパンで、消費税でやっていきましょうという考え方だと思うのですか、一方で、消費税は低所得者対策が必要だということで今回、年金生活者支援給付金制度を作ったり、これから簡素な給付措置だとか、給付付き税額控除とか、総合合算制度とか検討すると言っていて、三党合意では軽減税率の検討まで盛り込まれてしまったわけですね。従って、負担構造がいったいどのようになるのか、よく分からないという面があります。消費税を増税した事によって、今までと違う形で財政の維持可能性が確保出来たのかどうかは、もう少しよく見ていかないといけないでしょう。

工藤:田中さんどうですか?

田中秀明氏田中:同じ意見になってしまいます。消費税そのものの増税については、このねじれ国会の中で達成したことは間違いなく評価すべきだと思います。他方、社会保障の制度の問題は基本的には手をつけられなかった。増税するのに手一杯だったということではないでしょうか。

工藤:今の点も有識者の方に聞いてみました。そうしたら、皆さんと同じで「評価出来る」、「どちらかと言えば評価出来る」という項目が、合わせて7割になりました。今まで政府のやっていることは、ほとんど全部マイナス評価なのですが、ここだけは評価できている状況です。逆に言えば、今まで、どうしてこういう決断をしなかったかということですが、一方で「全く評価できない」、「どちらかといえば評価出来ない」という方も3割近くいるということです。

 その中で注目しなければいけないと思っているのですが、消費税の増税によって財政再建の道筋が描かれたと判断しているか、というのも聞いてみました。今度は逆の反応になりまして、「道筋が描かれた」というのはほとんど誰もいなくて、「半分くらい道筋が描かれた」、これはだいたい20.7%。「半分の道筋も描かれていない」は46%、「道筋が全く見えない」というのが33%ですから、8割がさっきの消費税の増税を決断したと、超党派でやったということに関しては評価したけれども、財政再建という課題から見ると、「全く評価できない」というのが8割いるというのが現実ですが、ここをどのように見るかということです。土居先生からお願いします。

土居:先ほど田中先生もお触れになりましたけど、基本的に増税はいいけれども、歳出削減、あるいは社会保障の効率化、重点化が伴ってなかったということが、今の結果に出ていると思います。そうすると、当然ながら、消費税増税だけだとまだ財政再建のためには不十分で、やはり社会保障給付も効率化、重点化しないと財政健全化の道筋が見えない。そうすると、ああいう結果になってくると思います。


辻褄合わせの増税で、行きつく先は・・・

工藤:ここは議論になってくるので土居先生にもう一つ聞きたいのですが、この消費税を織り込んだ形での内閣府の試算、つまり、政府が国民に約束しているのは、2015年にプライマリー赤字を半減にする。2020年にはその赤字をゼロにすると、これは昔のG20でも言ってましたし、かなり重い約束だと思いますが、2015年の赤字半減は、実は微妙なのですが、成長がそこにビルトインされていますし、そこはかろうじてどうにかするかという話ですが、その先の話、つまり2020年のプライマリー赤字のゼロは全く見えないわけですよ。財政再建がこの5%によって、消費税で見えないというのは当たり前のことのような気がしますけど、どうですか?

土居:その通りだと思います。私の印象で言うと、消費税を解決の一つの重要な切り札に使うとすれば、少なくても消費税率は15%ぐらいにまであげないと財政健全化の道筋はつけられない。ただ、問題は消費税5%だけでもいろいろと議論があった上に、これからさらにもう5%上乗せして増税するということについては、全然国民のコンセンサスが得られていないわけで、かつ消費税増税だけで全てを解決する必要もない。そうすると歳出削減、さらに新たな取組みをどうやって示すのかということをはっきり示されないと、財政再建の道はまだまだ見えてこない。やはり2020年までを目指すならば、極論を言えば消費税増税だけで何とかしようとすると、消費税率は15%ぐらいまでもっていかないと、と思いますし、歳出削減だけでやろうと思うと、社会保障給付とて例外、聖域でないという形でやらないといけないし、おそらく両方のミックスというところが落とし所になると思うのです。そこを見せないと2020年までにプライマリーバランスを黒字化するということは中々、難しい。経済成長だけ促したところで、日本の税制の構造はそんなにどしどし自然増収が入るような構造になっていませんから、経済成長だけでも難しい、こういうあたりだと思います。

工藤:鈴木さん、今の話に続けるのですが、僕はさっきのアンケートで「半分くらいの道筋は描かれたと思うか」という質問は、実をいうとプライマリーバランスの半分を意識していました。ただそれですら、20%しかなくて、それ以上つまり8割が「道筋が不透明」、この有識者はどういう判断なのでしょうか?

鈴木:おっしゃったように2015年頃に税率10%で、その先が全然、見えていないという気持ち悪さが残ってしまっている。加えて申し上げると、2020年度までに遅くとも、プライマリーバランスを黒字化させるという目標ですけど、2020年度にピンポイントで黒字化させればいいということではなくて、その先も高齢化は進むわけですから、システム自体をプライマリーバランスの黒字を維持できるようなシステムにしていかないといけない。つまり、辻褄合わせでどれだけ足りないので何%増税という話ではなくて、社会保障制度、財政制度全体を超高齢化の中でも2020年代、30年代に維持出来るような改革の中身が今回、見えていない。例えば後期高齢者医療制度を廃止してどうするのかについて、結論が得られなかったわけです。それが典型ですけど、そういうことがこのアンケートの結果に出ているのではないでしょうか。

工藤:財政が深刻なのは、高齢化社会に伴って社会保障費が急増している構造があると。それについては社会保障のシステムに関して今回、何か変わったわけではない。逆に、ばらまいたりする状況になっている。とにかく5%上げるということはこれほど大変なのかということだけれども、結果として上がっても、財政再建という別の目標設定のメガネから見ると、全然、その目標にもなっていないということですよね。構造と数値的にもという理解で......

鈴木:ただ、ひょっとすると、消費税は非常に国民的関心が強い点が重要かもしれません。社会保険料があがるのは、皆なんとなく受け入れますが、消費税には非常に厳しい。今回、社会保障と消費税とをひもつけましたので、両者を比較考量して、社会保障を減らすのか、消費税を上げるのかという国民的議論が出来るプラットフォームができたということが、今回の成果と言えるかもしれない。

工藤:田中さんどうですか?


増税5%はとりあえずの止血剤

田中:このアンケートの回答者は冷静に今回の消費税の増税を見ていると思います。病人に例えて申し上げまると、日本の財政は今はまさに血が出ていて、赤字と言う意味での血がどんどん出ている状況です。それを少し一時的に止めて、針で縫って血が出ないのを少し止めている。しかし、血は出ています。ただ、一時的に止まっても病気そのものが直っていないので、数年で消費税5%の増税の効果ははげ落ちてしまい、さらに血がどんどん出ていくと予想される。それは鈴木さんもおっしゃったような高齢化の問題であり、さらに消費税の増税に際して、自民党あるいは公明党も公共事業をもっと増やそうとしたように他の歳出も増えます。今度、財源が出来たので、整備新幹線をつくろうと、こういう別の声も聞こえているわけです。いずれにせよ、病気そのものは直っていません。一時的に出血が少なくなっているだけです。この止めた所がいずれほころびてしまって、また血がどんどん出てくる。仮に5%増税しても2020年代のプライマリーバランスの達成という意味では、まだ努力が足りないのが現実です。

工藤:今の話は重要な論点があって、消費税の5%の増税は何のためにやるのかと、つまり上げることが大変だから、上げたということでよくやったという話だけれども、しかし、上げても財源が何に使われるかと、例えば基礎年金の2分の1とかいろいろあったから、いろんなことになってしまったら、財政再建にあまり寄与しないこともあり得るわけですよね。

土居:特に民主党政権になって消費税増税の議論をしているプロセスの中でときおり聞こえてきたことは、財政再建のために消費税を増税すると言えば、多くの国民は反発するだろうから、社会保障給付のために消費税増税をお願いすると。そっちの方に軸足をもっと移していくべきである、ないしはそうすれば国民も少しは理解してくれるという立論が、かなり顕著にあったと思います。そうすると端から財政再建のために増税するわけではない、と言っているのも同然のような状態。つまり社会保障と税の一体改革の取り組みに対して、別の角度から批判する人は、結局は社会保障のために消費税があたっているのではなくて、財政再建のためにあたっているのだという見方をする方もいるかもしれませんが、私の目から見るとかなり社会保障給付にひきずられた形で消費税増税の財源が充てられている。そこにはもちろん拡充部分も入っている。そうすると、やっぱり消費税増税が純粋に財政赤字削減に結びついている部分は、相当限定的になっている。

工藤:だからと言って高齢化の社会保障の持続性が、これによって何かが変わったわけでも全然ないですよね......この前、震災の復興財源を流用しているという話があったじゃないですか。同じようにせっかく税金を上げてもちゃんとした目標がなく、そもそもなんの目標かもあいまいになっていますけど、ちょっと一言ずつ。

鈴木:これで財政再建になるのかという意味では、我々もっと一体改革を数字で評価しなければいけないと思っています。例えば機能強化といった時に、税をいれて保険料を低所得者で軽減するということを機能強化と呼んでいたり、それから効率化といった時に公費を減らすこと、つまり給付を減らすのではなく、公費を減らすことを効率化と呼んでいたりします。ですから、本当にこの一体改革と消費税増税で財政がどれくらい改善するかということは、一方で保険料を減らして、税を取っているだけかもしれませんし、効率化といってもそれは公費を減らしているだけで、給付は全然減っていないかもしれない。中身を本当によく見ないと、どれほど効果があるのかは、実はよく分からない。

工藤:田中さんも一言。

田中:消費税増税は確かに評価出来るけれども、冷静に考えると、今回の一体改革は社会保障関係費が増えているので何とか少しでも財政赤字を食い止めたいと、そのための財源調達であって、社会保障と税、例えば保険料と税はどう分担するとか、そういう意味での一体改革ではありません。足らない所を埋め合わせる。それも一つの進歩ではありますが、結局、歳出削減より増税の方がやさしいのです。厳しい改革は民主党政権では難しかったということだと思います。

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放送に先立ち緊急に行ったアンケート結果を公表します。ご協力ありがとうございました。

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